エンジニアをしながら育児をすること

専門職を続けること

技術は日進月歩です。どんな業界にせよ、専門職でごはんを食べていくためにはその道における現在を把握し、自分に何ができるかを示し続けなければいけません。とりわけ、ソフトウェア業界はそのスピードが速いと言われていますので、技術、知識のアップデートが日常的に必要とされます。

これまでやってこれたわけ

独身時や夫婦二人だけの時期は、業務時間以外でも、やる気が余っているときに適当に Web アプリや bot を書いたりして、趣味の一部として仕事につながる技術をさわって過ごすことができていました。また、業務タスクを多めに積んでしまったとしても、ゆるゆると会社に残って作業したり、土日に調べ物をしたりと、バッファの調整は容易でした。

今思えば、贅沢なほどに時間があったのです。 足りないものがあれば、とにかく時間をかけてそれを補うことができる環境だったという、そのことによって自分の仕事のレールはどうやら支えられていました。

子供の時間と自分の時間

2016 年に娘が、2018年に息子が産まれました。今現在は妻は仕事復帰して子供は保育園に通っており、夫婦の就業時間の都合で送りを私が、迎えを妻が行っています。 朝早く出勤して作業することはできなくなりました。また、夜の乳幼児ワンオペは消耗が大きいものですので、むやみに会社に残って作業することもできなくなりました。 休日にいたってはずっと子供がいるので、平日よりむしろ消耗します。

自分の仕事のレールを支えていた時間の一部が消滅しました。このままではできることがなくなる、仕事を続けていけないという未来を容易に想像できるようになりました。

"なんとなく勉強" からの脱却

生活を変える必要がありました。趣味の一部で、つまり空き時間にやる気ドリブンで技術を追いかけることは無理でした。精神力を育児で使い切るのでやる気は残りませんし、そもそも業務時間以外に時間がありません。別の効率的な手段を探しました。

人に伝えてみる

人に教えることは自分の理解を助けるとよくいわれます。勉強はインプットとアウトプットのバランスを取ることで効率が上がるので、主に通勤時間をインプットに、業務時間中に積極的に人に伝えることをアウトプットとすることで短い時間で効率よく理解が深まることを実感できました。具体的には、これまでは「こんなこと他の人も普通に知ってるか調べればすぐわかるだろ…」と思っているようなことでも、ためらわずに外に出すようにしました。また、勉強会を主催したりもしました。

人から教わってみる

これも本質的には前項と変わりませんが、たとえなんとなくわかっていたとしても、自分の言葉を使って人に質問してみるようにしました。もちろん人の時間で迷惑にならないような範囲ですが… これも結局はアウトプットです。自分の理解を明確にするのに役立ちました。

試験を受けてみる

これはいわゆる締め切りドリブンです。時間がないという問題を本質的に解決していないのですが、うっかり重要度も優先度も低い作業に手を出してしまうことを避けるという意味で役に立ちます。試験自体は英語や技術資格のような、基礎的なものにフォーカスしました。

レールの修復

時間がないことをリアルに突きつけられたことで、30半ばを過ぎてやっと、やっと、本当に今更ながら、続けるべき習慣、避けるべき習慣を考えることになりました。アウトプットの大切さを知りました。思考の整理と定着の関係がわかってきました。仕事のレールを維持する方法がすこしずつ見えてきました。残念ながら削った趣味もありますが、少なくとも育児が落ち着くまでの何年かは仕方ないと割り切っています。

その先

2019 年は時間のない生活の実態を理解し、いろいろな方法を試す中で少しの活路を見出すこともできました。この1,2年で理解した、と感じたことのほとんどは、すでに知っていたはずのことです。アウトプットで学ぶことも、続けるべき習慣とは何なのかも、20代のころに聞いていたことばかりです。知り、理解し、実践するというステップがあることさえ、育児がなければ思い出せなかったかもしれません。 2019 年中には実践まで日常のリズムに乗せることはできていませんが、2020 年はこのリズムを掴む方法を模索していきたいと思います。